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【第十三位】村下孝蔵さんの「帽子」は風で飛んで何処へ。歌詞の意味や世界観を解説・鑑賞

村下孝蔵 帽子 アイキャッチ
おうじゃ(管理人)
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隠れた名曲ランキングのカテゴリーへようこそ!

今回でいよいよ13曲目となりました。

あともう一つだけ、さらに特徴的な一曲(というかひとまとまり)をご紹介しようと思っていますけれど、今回は「帽子」という作品を取り上げます。

こちらもまた知る人ぞ知る楽曲だと思われますが、もし味を感じることができたら大好きな一曲になること間違いなしですよ!

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参考:村下孝蔵さん楽曲解説特集🎸

当サイトは非公式のファンサイトであり、ファンの皆様がご自身なりに楽しめる場を提供することを目的としています。同時に、村下孝蔵さんの全楽曲、とりわけその歌詞の意味や世界観を解説することを主たる目標に掲げています。

⇒村下孝蔵さん楽曲解説・歌詞解題についての詳しい「考え方」はこちら

ご興味のある方は、以下の記事もお楽しみいただけるはずと自負しておりますので、お時間のあるときにどうぞ遊びにいらしてくださいませ。

↓↓↓

\ 計13曲!隠れた名曲をランキング!/

【第十三位】村下孝蔵さんの「帽子」は風で飛んで何処へ。歌詞の意味や世界観を解説・鑑賞
【第十三位】村下孝蔵さんの「帽子」は風で飛んで何処へ。歌詞の意味や世界観を解説・鑑賞

(解説楽曲例:ロマンスカー、だめですか、いいなずけ、北斗七星、夢からさめたらなど)

⇒「踊り子」など代表曲はこちら

この記事へ直接訪れてくださった方は、きっと本楽曲をよくご存じでしょうから、どうぞ温かい目でご覧くださいませ。

初めて聴くという方は、ぜひ以下の解説を読む前に、ご自身なりの耳と心で全体を一度味わってみてください。

いずれの場合も、管理人なりに全力を尽くしましたので、皆様が村下さんの楽曲を別な視点から楽しむ参考になることだけは請け合いです☆

下部に歌詞全文を用意しました。適宜ご利用くださいね。

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🎵 当記事の著者について

当サイト管理人

新おうじゃ

名前 / Name  
おうじゃ 

職業 / Occupation
生来詩人、お米賞味マイスター、歌詞解説・鑑賞家、福話術者(家庭教師も兼業)

実績 / Achievements
生まれたときから詩的な人生を送っています。村下孝蔵さんに出逢ってから、その楽曲を肌身離さず心に持ち歩いては味わってきました。
姉妹サイトではシティポップの楽曲解説や、自身の生活の中で頂いたお米の銘柄の特徴をレビューしつつ【福話術】と題したあらゆる人の心に寄り添う記事を執筆、分野を開拓しています。

(姉妹サイト「おうじゃの福眼」プロフィールページへ遷移します)

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『愛されるために』所収

第十三位 “帽子”

(遷移せずこの場で再生できます▶)

「あけましておめでとう 元気ですか?
僕は生きています」

解題

村下さんには珍しいコンピューターによる打ち込み主体のアルバム『愛されるために』収録の本楽曲。

冒頭からしっとりしたリズムが電子ドラムやパーカッションで刻まれます。

切なげなサックス(これも電子なのでしょうか)によるイントロの段階で、何かを振り返っている情景なのだろうかと推測できてしまうのがすごいところ。

基本的な場面設定としては、お付き合いしていた男性や、二人で過ごした日々を女性が追想しているというものですね。

年賀状 あなたの小さな文字
指でなぞる
それぞれの春を待ち
それぞれに過ごした

慌ただしい年末が過ぎ年が明け、迎えた新しい年を女性は一人で過ごしています。

家族や友人と一緒にお正月を味わうということもなく、極端に言えば、カーテン越しに元旦の日差しを浴びているような雰囲気を感じます。

そこへ「あけましておめでとう……僕は生きています」と記された年賀状が届きました。

女性の気持ちは瞬時に男性と過ごした日々へ舞い戻っていきます。

現在、男性と女性は別の場所で「それぞれの春を待ち」「それぞれに過ごし」ています。

「それぞれの春」という表現ですが、お互いに新しい恋(春)へ踏み出すことを求めているというよりも、もっと感覚的なものでしょう。

カーテン越しに見る灰色の朝日のような季節・心境(冬)からより暖かく明るいあり方(春)への変化を、少なくとも女性は希望しているのでしょうか。

村下さんのデビュー前自主制作アルバムの名称が『それぞれの風』といいますし、村下アニキの人間観、人生観が垣間見えるようです。

本当になくしたくないものなら
いつも 目を離さずに
誰よりも そばで
からまるようにして

女性は男性と一緒だった日々を振り返ります。

きっと女性は男性の幸せを願って、男性が自分のもとを離れることをむしろ促したのかもしれません。

けれど「本当になくしたくないもの(男性との関係)なら」ば「いつも 目を離さずに」男性と一緒にいることを選べばよかった。

他の「誰よりも そばで」、自分がわずかでも男性から離れる気持ちなど持ち合わせていないのだということを身も心も「からまるようにして」あらわして、

つきまとい 見つめあい
暮らしてみたかった

男性が行くどんなところへでも「つきまとい」、男性の瞳に必ず自分が映るようにして「見つめあい」、二人だけの世界で「暮らしてみたかった」

それが可能だったのになぜ自分は選択しなかったのか、と女性の感情は高ぶります。

一見、ストーカー気味なふるまいにも読めますが、もちろんそういう部分に焦点が当てられているわけではありません。

誰しもときに感じる想いを正面から描いているだけですね。

妹のようだと チヤホヤされ
癖もまねてみたり
口元が似てると 言われたから
いつもすました

ある日の情景が女性の胸に浮かんできました。

友人も交えて遊びに出かけたとき、女性は友人たちから「妹のようだと」、二人はすごくにていてお似合いだと「チヤホヤされ」ます。

あるいは男性の親など家族の言葉かもしれません。

気をよくした女性は男性の「癖もまねてみたり」します。

たとえば「口元が似てると 言われたから」、微笑むのでなく「いつもすまし」ていました。

ここは大変味わいのある箇所です。

女性は男性のまねっこをしていて、口元が似ているととりわけ言われたものだから、すました顔をしている男性をまねして「すまし」ています。

裏返せば男性は女性と一緒にいる時間にも「すまし」ているのです。

二人で楽しくおしゃべりをしたり、笑い合ったりすることも当然あると思いますが、それよりもすまして唇を結んでいる時間の方が多いということ、その趣を感じませんか。

根本的なところまで入り込めば、女性はこの男性といて本当に幸福だったのでしょうか。

また幸せとは何なのでしょうか。

口紅をつけたけど
ダメだって叱られ

二人の様子を示唆しているかのようですが、男性は女性が「口紅をつけた」のに対して「ダメだ」と叱ります。

特に男性優位の関係だったという意味ではないのでしょう、しかし、おそらく女性はこれを素直に受け入れました。

そのうえで現在も男性を慕っているのです。

女性だってお化粧をしたり、おしゃれをしたり、自分のやってみたいことはあるはずです。

けれど、男性のためとまでは言わないながら、なんだか男性の言うとおりにしてみたくもなる。

男女の関わりの一つの在り方が提示されているようですね。

太陽が 強く まぶしすぎるから
外を歩けなくて

ここでは女性の心が現在に戻ってきています。

いまの自分の沈んでやるかたない気持ちの状態では「太陽が 強く まぶしすぎ」るので「外を歩けなくて」、ただ一人過ごすしかありません。

そんな中でできることといえば、男性との思い出を手繰ることくらいです。

捨てられず しまっておいた帽子も
ブカブカで似合わない
あの日とおなじように

男性のかぶっていた帽子を「捨てられず」、女性はずっと「しまっておいた」のですけれど、年賀状の届いたこの日は再び取り出してみました。

やはり「あの日とおなじように」女性の頭には「ブカブカで似合」いません。

この部分も、実際にはすれ違っていたのかもしれない男性と女性の関係性を暗示しているでしょうか。

女性は以前に男性の帽子をかぶったときのことを思い出します。

水色の帽子が 風で飛んで
坂道 追いかけた

二人で出かけた風の吹き抜ける場所で、男性の「水色の帽子が 風で飛んで」しまい、女性は「坂道」を走って「追いかけ」ました。

男性が落ち着いたふるまいをする人物であることがはっきりしてきます。

女性は男性と一緒にいる気分の高まりもあって、はしゃぎながら帽子を追いかけたのですが、男性はちょっと醒めています。

「おかしいよ なんだか 子供じみて」
あなた笑っていたね
何度も

帽子を追いかけ、追いつき拾って振り返る女性に向かって、男性は「おかしいよ なんだか 子供じみて」と「何度も」笑っていました。

女性はこの男性の前でなら、子供になれるということだったのでしょうか。

子供のようなふるまいを許してくれる男性だけれど、ときにはお化粧をするのを許さなかったり、一緒に笑ってくれなかったり、どこか遠いようなところもある。

女性自身も、男性のどんなところが好きだったのかよく分からないのかもしれません

でも「本当になくしたくないもの」だったということは、自分にとって間違いがない。

だから女性は心の中で、

ああ逢いたい

(補足)

本楽曲の最後には、村下さんの公式全楽曲の中でも唯一である語り(台詞)が入っています。

まさに村下さん自身がこの男性として語ってくれる言葉が、楽曲と相まって世界観を見事に際立たせていますね。

あけましておめでとう 元気ですか?
僕は生きています
寒さがひとしお厳しくて
今年の冬は誰にとっても かなり
ひどいことになるような気がします
でも 何とか元気です
ちゃんとしてるか

口数の少なかったであろう男性が、年賀状に言葉を連ねたのはどんな気持ちからだったのでしょうか……。

聴きどころ

直前にも挙げましたけど、やはり村下さんのそのままの声を歌の中で聴くことができるのは本楽曲のみですので、まずはこの台詞でしょう。

しっかりと九州の訛りが入っているせいで、男性の出身地が定まってしまいそうなのはご愛敬です笑

曲自体に関しては、電子的な音楽を多用していることにより、アコースティックによる音源とはまた違った大人らしさが表現されているように感じます。

村下さんが存命であれば、こういう路線の楽曲をもっと生み出してくれたのでしょうか。

もちろん村下兄貴のしっとりとした歌唱からも耳を離すわけにはいきませんね。

管理人の感想(あとがき)

本楽曲もまたハマりました……。

個人的に『愛されるために』はひとつ前の『名もない星』を経て村下さんのワールドが完成したアルバムだと感じています。

早い段階で、または最初から、村下さんの関心は「恋」から「愛」へと移っていたと思います。

「愛」の意味を言葉で表現するのではなく、その現れ方を実際の私たちの姿に見出すこと。

本当にその名手だったと思えてなりません。

ああ……逢いたい(いえ、そこまでではないのですけど笑)

(付記)隠れた曲ランク

隠れた名曲ランキングでは『愛されるために』(1994年)から三つの楽曲を採用しました。実に名曲の多いアルバムです。

けれど「初恋」や「陽だまり」などからは遠く離れたテイストを持つ楽曲も多く、やはり熱心なファンの方がかみしめて味わうような位置づけになっていると感じます。

本楽曲も明らかにその部類で、ライブで演奏されたのを見たことがありませんし、アルバムを購入した人だけが出会えるレアな曲とさえいえるかもしれません。

「ロマンスカー」(1992年)も思うようにヒットせず、アルバム自体の売り上げもそれまでよりは低下していたでしょうから、なおさらでしょうか。

隠れた曲ランク=5

まとめ

今回は村下孝蔵さんのお正月曲?「帽子」を解説してまいりました。ぜひ皆様もご自分なりの解釈で楽しんでみてくださいね☆

他の楽曲解説もご覧になりたい方は、歌詞全文下部↓のリンクへどうぞ。(直近の隠れた名曲解説は「交差点」でした)

帽子【歌詞全文】

「あけましておめでとう 元気ですか?
僕は生きています」
年賀状 あなたの小さな文字
指でなぞる
それぞれの春を待ち
それぞれに過ごした

本当になくしたくないものなら
いつも 目を離さずに
誰よりも そばで
からまるようにして
つきまとい 見つめあい
暮らしてみたかった


妹のようだと チヤホヤされ
癖もまねてみたり
口元が似てると 言われたから
いつもすました
口紅をつけたけど
ダメだって叱られ

太陽が 強く まぶしすぎるから
外を歩けなくて
捨てられず しまっておいた帽子も
ブカブカで似合わない
あの日とおなじように


水色の帽子が 風で飛んで
坂道 追いかけた
「おかしいよ なんだか 子供じみて」
あなた笑っていたね
何度も
ああ逢いたい

(台詞)

あけましておめでとう 元気ですか?
僕は生きています
寒さがひとしお厳しくて
今年の冬は誰にとっても かなり
ひどいことになるような気がします
でも 何とか元気です
ちゃんとしてるか

(作詞・作曲:村下孝蔵 編曲:水谷公生ー1994年7月21日)

この歌詞全文の引用は「帽子」の魅力を解説するため、および閲覧者の方々の便宜のための必要によってなされたものです。

関連記事ーその他楽曲解説など

ここまでお読みくださってありがとうございました!

村下孝蔵さんには他にも素敵な楽曲がたくさんあります。

当サイトでこれまで取り上げた楽曲を改めて掲げておきますので、お時間のあるときにぜひ遊びにいらしてくださいね

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