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【第十二位】村下孝蔵さんの「交差点」は現代版源氏物語のよう。歌詞の意味や世界観を解説・鑑賞!

村下孝蔵 交差点 アイキャッチ
おうじゃ(管理人)
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村下孝蔵さんの隠れた名曲をご紹介する本カテゴリーへようこそ!

ここでは「初恋」や「踊り子」など著名な楽曲以外で必聴の名曲を、ランキングの形式で13曲にわたって取り上げています。

今回は村下さんらしさの一つが大変よく表現された「交差点」という楽曲です。

男性と女性がどのような交差点すなわち岐路に立っているのか、絶妙な言葉まわしによって描かれています。

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参考:村下孝蔵さん楽曲解説特集🎸

当サイトは非公式のファンサイトであり、ファンの皆様がご自身なりに楽しめる場を提供することを目的としています。同時に、村下孝蔵さんの全楽曲、とりわけその歌詞の意味や世界観を解説することを主たる目標に掲げています。

⇒村下孝蔵さん楽曲解説・歌詞解題についての詳しい「考え方」はこちら

ご興味のある方は、以下の記事もお楽しみいただけるはずと自負しておりますので、お時間のあるときにどうぞ遊びにいらしてくださいませ。

↓↓↓

\ 計13曲!隠れた名曲をランキング!/

【第十二位】村下孝蔵さんの「交差点」は現代版源氏物語のよう。歌詞の意味や世界観を解説・鑑賞!
【第十二位】村下孝蔵さんの「交差点」は現代版源氏物語のよう。歌詞の意味や世界観を解説・鑑賞!

(解説楽曲例:ロマンスカー、だめですか、いいなずけ、北斗七星、夢からさめたらなど)

⇒「踊り子」など代表曲はこちら

以下の解釈はもちろん個人的なものですが、管理人なりに全力で取り組みましたので、皆様が村下さんの楽曲を別な視点から楽しむ参考になることだけは請け合いです☆

下部に歌詞全文を用意しました。適宜ご利用くださいね。

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🎵 当記事の著者について

当サイト管理人

新おうじゃ

名前 / Name  
おうじゃ 

職業 / Occupation
生来詩人、お米賞味マイスター、歌詞解説・鑑賞家、福話術者(家庭教師も兼業)

実績 / Achievements
生まれたときから詩的な人生を送っています。村下孝蔵さんに出逢ってから、その楽曲を肌身離さず心に持ち歩いては味わってきました。
姉妹サイトではシティポップの楽曲解説や、自身の生活の中で頂いたお米の銘柄の特徴をレビューしつつ【福話術】と題したあらゆる人の心に寄り添う記事を執筆、分野を開拓しています。

(姉妹サイト「おうじゃの福眼」プロフィールページへ遷移します)

『恋文』所収

第十二位(番外編) 交差点

(遷移せずこの場で再生できます▶)

秋 北風
肩を通りすぎてく
自分の気持ちが
よくつかめない

解題

儚く切なげなイントロで楽曲が始まります。

冒頭の歌詞にもあるように、秋風が二人の、人間たちの周りを吹きすぎて去ってゆくような情景が浮かびます。

女性的な言い回しも含まれる本楽曲ですが、全体としては男性が女性への気持ちを歌っているととらえるのが適切に思えます。

村下さんの歌には女性的な感性を持つ男性がしばしば現れますね。

直近で解説した「りんごでもいっしょに」とは異なって、男性は自分の気持ちを扱うことにとても難儀しています。

この曲も「いいなずけ」同様、明白に道ならぬ恋を題材としている点に特徴があります。

もし子供が
欲しがっているものを
与えられない時のように

秋が訪れて冷たい風が首をなで、「肩を通りすぎて」服の裾をはためかせるころ、すでに結婚してパートナーがいる男性は「自分の気持ち」を持て余します。

理性では許されないと分かっているが「子供が欲しがっているものを与えられ」ずに駄々をこねるときのように、何度かなぐり捨ててもその気持ちは舞い戻ってきます。

村下さんの楽曲に登場する人間たちの特質ですけれど、本楽曲でも「愛人」などの名称でくくるのは誤り、あるいはもったいないような精神的な結びつきが、男性と「道ならぬお相手」の間に存在することがうかがえます。

あなたは街のすみで
淋しく
暮らしているのさ

もしかするとお相手は独身なのかもしれませんね。

「街のすみで淋しく暮らしている」その女性に対する気持ちを男性は抑えることができません。

家にいても、仕事に出ても、男性は女性に思いを馳せてしまいます。

自分を待っていてくれるかもしれない少し陰りのある横顔と、テーブルで一人お茶などを飲んでいるかもしれない姿。

もちろんお相手も外で動いたり仕事をしたりしていると読んでもよいでしょうけど、この部分はやや源氏物語的な通い婚の空気も感じるところです。

男性が出向いていくことで、それだけで喜んでくれる女性が「街のすみ」で「淋しく」暮らしている。

または、男性がそういうイメージで二人の関係を見ているということかもしれません。

好きになっては
いけない人いるならば
会わずにいられたら
よかった

一般的にあり得る以上の不都合なこともなく、男性の結婚生活は順調だったのでしょう。

先に子供のたとえが出ていたことや、後に出てくる言葉遣いからしても、おそらく子供ももうけていて、円満な家庭を築いているのだと思われます。

しかし、考えてもいなかった出会いが男性の心をかき乱します。

「会わずにいられたらよかった」と嘆きながら、一方で、それほどに好きになれる人がこの世にいるのだということに驚きも感じている男性。

けれどそのお相手は「好きになってはいけない人」だという激しい矛盾に、男性は苦しみます。

今の幸せをこわして
あの人と
どうして
やりなおせないのか
どうして…

男性の心は飛び立って、このお相手の女性と結ばれる未来を想像します。

しかしそれは奥さんや子供(たち)に離別を味わわせるという形で「今の幸せをこわして」しまうことにつながります。

男性自身も「今の幸せ」そのものを破壊したいとも思っていないし、とても大切に感じているのでしょう。

したがって、男性はどうしたいのか、どうしたらよいのか「自分の気持ちがよくつかめ」ず、葛藤し続けるのです。

なぜ、この現在のような状況があるのか。「どうして」あの女性と、幸せを目指して「やりなおせないのか」……。

冬 木枯らし
髪を濡らしてゆくよ
あなたの心が
よくつかめない

季節は移り冬になると、「木枯らし」が髪の中にまで通って冷たく「濡らしてゆく」ようになります。

男性と女性は逢瀬を重ねていますが、男性が自身の気持ちをつかみかねているのと同じように、女性の心も何らかの動きがあるようです。

女性のほうも、このまま男性と一緒に過ごす時間を持ってよいものか悩んでいるのかもしれません。

その様子が、男性をして「あなたの心がよくつかめない」と思わせているのでしょうか。

もし大人が
欲しがっているものを
手にできなかった
時のようさ

ここは難解です。

先ほどは子供が駄々をこねるかのように、男性が何度も何度も女性のことを思ってしまうという理解を採用しましたが、それとの対比でとらえられるでしょうか。

男性と女性は道ならぬ間柄ながら、二人の時間を持つ機会を繰り返してきました。

この道の先に二人が結ばれる結末が存在していないことを、両者ともによく分かっています。

このような二人の関係の様子が、そのまま「大人が欲しがっているものを手にできなかった時」だとみることもできそうですね。

大人という立場で、欲しいものは自分が努力や工夫をすれば手にすることができるはずだが、この関係だけはどうにもならない。

または、子供と違って大人は欲しいものが手に入らなくても駄々をこねたりせず、もっと静かに悔しがったり、あきらめたりする。

女性の心の様子が、そういうあり方と似ているように見えるということでしょうか。

ぼくらは街のすみで
優しさ
わかちあっていた

この先が存在しない二人にとって、実は現在のあり方がゴール地点であるということ。

きっとそのことに気付いたのでしょう、男性と女性は今日も「街のすみで優しさ」を「わかちあ」います。

結婚生活や日常の生活ではどうしても背後に隠れてしまいがちな温かな感情を、二人はこの関係において与えあっていたに違いありません。

好きになっては
いけない人いるならば
会わずにいられたら
よかった
今の幸せをこわして
あの人と
どうして
やりなおせないのか
どうして…

とはいえ、男性の心は女性と一緒になる未来へやはり飛躍します。

けれどもそれは成り立たないことで、むしろこういった美しい道ならぬ関わり方もこの世界には存在しているのだということを教えられるようですね。

村下兄貴の楽曲に限りませんが、恋愛を歌う曲には、恋や愛情といったものについて知らないうちに抱え込んだ先入観を払拭する力があると思います。

ところで本楽曲のタイトルは「交差点」です。

男性自身が今の幸せを壊せないという心情を吐露している以上、結婚生活を捨てて女性と一緒になるかならないかの分かれ道のことだなどと読むべきではないでしょう。

そうではなく、ずっと交差点にいるような関係の価値を再発見しているのではないでしょうか。

抽象的ですけれど、いつでも何かをどちらか一方に倒してしまったり、どこかへ進んでいないといけないと思ってしまう人間たちへの示唆とも受け取れそうです。

少なくとも、村下さん自身はこの「交差点」のいずれかを選ぶべきだと歌っていないことは確かだと考えます。

聴きどころ

全編を通じて底流で響き続けるシンセサイザーの音にまず注目です。

男性の心の中、男性と女性の関係、二人でいる時間など全ての情景にこの音色の風が吹き抜けています。

この細い音色だけで楽曲の雰囲気を下支えしているのは見事だと思います。

間奏では逆に強めのエレクトリック(?)な演奏が入り、葛藤と決意の両方を示しているかのようです。

村下さんの声にちょっと貫禄が感じられるのも聴きどころですね。

1988年というキャリア中期に差し掛かる時期に発表されたアルバムですし、……あ! 気が付きました。

「交差点」なのは村下さん自身の音楽生活だったのかもしれません笑

管理人の感想(あとがき)

自分の村下アニキ遍歴を振り返ると、所収アルバム『恋文』を入手したのは確か大体のアルバムを聴いた後だったのではないかと記憶しています。

ジャケットが比較的地味なので手に取らなかったのでしょうか?

ところが、村下さんが深い世界へさらに向かっていくきっかけになっているかのような本楽曲にも出会えましたし、全くすばらしいアルバムです。

当時も不倫的な関係の歌だと理解していて、けれどなぜこんなに美しい感じも伴うのだろう……と不思議に感じていたものです。

(付記)隠れた曲ランク

村下さんのアルバムのうち、本楽曲を収録した『恋文』はLPレコードで発売された最後のアルバムです。

時代的にも音楽制作の規格的にも転換点にあった中で作られた本楽曲は、あくまで管理人の肌感覚ですが、かなりの隠れた曲だと思います。

『恋文』からはシングルでも発表された「風のたより」がライブで歌われるのが定番で、本楽曲が歌われているのを見たことがありません。

もしご覧になったことのある方は、すごくすごくレア体験だと思います……(よろしければ音源など教えてください!)

隠れた曲ランク=5

まとめ

今回は村下孝蔵さんの「交差点」を解説してまいりました。ぜひ皆様もご自分なりの解釈で楽しんでみてくださいね☆

他の楽曲解説もご覧になりたい方は、歌詞全文下部↓のリンクへどうぞ。(直近の隠れた名曲解説は「りんごでもいっしょに」でした)

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交差点【歌詞全文】

秋 北風
肩を通りすぎてく
自分の気持ちが
よくつかめない
もし子供が
欲しがっているものを
与えられない時のように

あなたは街のすみで
淋しく
暮らしているのさ

好きになっては
いけない人いるならば
会わずにいられたら
よかった
今の幸せをこわして
あの人と
どうして
やりなおせないのか
どうして…


冬 木枯らし
髪を濡らしてゆくよ
あなたの心が
よくつかめない
もし大人が
欲しがっているものを
手にできなかった
時のようさ

ぼくらは街のすみで
優しさ
わかちあっていた

好きになっては
いけない人いるならば
会わずにいられたら
よかった
今の幸せをこわして
あの人と
どうして
やりなおせないのか
どうして…

(作詞・作曲:村下孝蔵 編曲:水谷公生ー1988年10月21日)

この歌詞全文の引用は「交差点」の魅力を解説するため、および閲覧者の方々の便宜のための必要によってなされたものです。

関連記事ーその他楽曲解説など

ここまでお読みくださってありがとうございました!

村下孝蔵さんには他にも素敵な楽曲がたくさんあります。

当サイトでこれまで取り上げた楽曲を改めて掲げておきますので、お時間のあるときにぜひ遊びにいらしてくださいね

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