アルバム

村下孝蔵さんの名曲【少女】に描かれる無垢な心の移ろい。歌詞の意味や世界観を解説&考察!

村下孝蔵 少女
おうじゃ(管理人)
(記事内にプロモーションを含む場合があります)


「少女」はシングルカットもされていて、村下孝蔵さんに出会って比較的早い段階で耳にする楽曲ですね。

しかしその日本語や情景、メロディの美しさと裏腹に、世界観の難解さたるや全楽曲中でもトップクラスであることも事実です。

当記事では「少女」の歌詞の意味や世界観をもっと深く味わいたいという方へ向けて、これまで50曲以上村下さんの楽曲解説をおこなってきた管理人が自分なりの解釈をお伝えします。

もちろん個人的な歌詞の理解にならざるを得ませんが、皆様がさらに村下孝蔵さんの魅力を感じるお手伝いができれば幸いです。

Q
参考:当サイトの村下孝蔵さん特集🎸

当サイトでは村下孝蔵さんの全楽曲、とりわけその歌詞の意味や世界観を解説することを目標に掲げています。

⇒村下孝蔵さん楽曲解説・歌詞解題についての詳しい「考え方」はこちら

ご興味のある方は、以下の記事もお楽しみいただけるはずと自負しておりますので、お時間のあるときにどうぞ遊びにいらしてくださいませ。

↓↓↓

\ 計13曲!隠れた名曲をランキング!/

村下孝蔵さんの名曲【少女】に描かれる無垢な心の移ろい。歌詞の意味や世界観を解説&考察!
村下孝蔵さんの名曲【少女】に描かれる無垢な心の移ろい。歌詞の意味や世界観を解説&考察!

(解説楽曲例:ロマンスカー、だめですか、いいなずけ、北斗七星、夢からさめたらなど)

⇒「踊り子」など代表曲はこちら

最下部に歌詞全文を付しましたので、適宜ご利用ください。

Q
🎵 当記事の著者について

当サイト管理人

新おうじゃ

名前 / Name  
おうじゃ 

職業 / Occupation
生来詩人、お米賞味マイスター、歌詞解説・鑑賞家、福話術者(家庭教師も兼業)

実績 / Achievements
生まれたときから詩的な人生を送っています。村下孝蔵さんに出逢ってから、その楽曲を肌身離さず心に持ち歩いては味わってきました。
姉妹サイトではシティポップの楽曲解説や、自身の生活の中で頂いたお米の銘柄の特徴をレビューしつつ【福話術】と題したあらゆる人の心に寄り添う記事を執筆、分野を開拓しています。

(姉妹サイト「おうじゃの福眼」プロフィールページへ遷移します)

Advertisement
楽天ミュージック
『花ざかり』所収

“少女”

⇒YouTube版はこちらで

「少女」は1984年4月1日に(村下さん31歳)、「踊り子」に続くシングルとして発売されました。その後同年12月8日発売のアルバム『花ざかり』に収録されています。

上記動画およびリンクは村下さんの楽曲では珍しいプロモーションビデオです。

白い壁を染めて 草笛が 響く丘
菜の花と そして夕月

解題

どこか衝撃的な、あるいは鮮烈な記憶を呼び覚ますような力強いイントロのままに全編を駆け抜ける本楽曲。

基本的な情景としては、男性が、かつて目にしたとある少女の印象やその変化の様子を歌っているものだと考えられます。

「初恋」や「踊り子」と異なって男女の恋愛を中心に据えていないことは、村下さんの楽曲の中でも実は稀かもしれません。

もちろん少女と関わった当時、男性がこの少女に恋をしていたととらえることも可能ですけれど、それでも淡いことこの上ない慕情でしょう。

夕景色の無垢な少女

切れた鼻緒 帰り道の少女が一人
灯りが 恋しくて 震えてた

本楽曲は明らかに和のテイストを盛り込む意図も含めて制作されています。

都会というよりは地方の小さな町で、昔ながらの「白い壁」を持つ屋敷の外縁、その小高くなった丘までも若い緑色に「染めて 草笛が」響きます。

丘から見下ろせる土地には、いちめんの「菜の花」が咲き誇り「そして夕月」が薄く白いままで夕焼けの中に浮かんでいます。

菜の花と月の組み合わせは古くからのもので、与謝蕪村に「菜の花や月は東に日は西に」という著名な句があります。

この句を踏まえるならば、太陽が西の果てへと姿を隠しつつあるという情景も加えて味わう必要がありますね。

そんな夕景色のもとで「帰り道の少女が一人」で鼻緒の切れた草履に手こずっています。

じょじょに暗くなっていく辺りの気配におびえながら、家族の待つ家の「灯りが 恋しくて」もどうすればよいか分からず「震えて」いました。

きっと男性が少女に出会ったのはこのときなのでしょう。

鼻緒の切れた女性の草履や下駄を男性が直してあげるというのも、かなり昔から用いられている劇的な情景と感じます。

かすりの着物 おさげ髪には
飾りなどありません

少女はおそらくこの町の同年代の女子が全員する「おさげ髪」をしています。

普段着として使いやすく、かすれた紋様の現れる「かすりの着物」を着て、もちろん髪「飾りなど」は付けていません。

まだ幼いこの少女は、この世に生まれ出てきて右も左も分からないまま、女の子としてそのままに生きているのでしょう。

純真無垢の純真を除いた「無垢」だけが際立って、少女の姿を取って暮れていく夕刻の情景に存在している印象です。

手を加えずに完成された美

したがって、

服をきせかえても 人形は
言葉など 知りません

仮に少女の「服を」華やかに「きせかえても」、最初から完全な美しさをたたえた「人形」とも喩えられそうなほど無垢な少女は「言葉など 知りません」。

少女は少女のままに心に沿って生き、感謝なり愛情なりの言葉などで応答するのではないということでしょうか。

男性が出会った少女は、そのときそれほどまでに美しくあったのですね。

ふり向いて 僕を見つけ
うれしそうに 微笑んだ
名も知らぬ あどけない 少女よ

暗い夜を怖れて震え涙するのも「ふり向いて」誰なのかさえ知らない「僕を見つけ うれしそうに 微笑」むのも、少女の心の素直な表現でした。

男性が少女の鼻緒を直してあげたのかどうかは分かりませんが、男性は「名も知らぬ」幼く「あどけない 少女」に深い美しさを見たのに違いありません。

冒頭から場面が続いている(暗い道で男性を見つけたから、安心して微笑んだ)と考えることもできます。

けれど、個人的には途中から観念と情景が混ざり合ってイメージの世界にも踏み込んでいるととらえたいところです。

少女の成長と変化

青いホタル 今も 甘い水を 探して
見つけられず 迷い込んだ

少女は成長していきました。

この部分は特に難解ですが、少女が成長していく過程で、純粋な時代の「甘い水」を「今も」「探して 見つけられず」、生きることの迷路に「迷い込ん」でしまいました。

思春期の悩みといってしまえば簡単すぎて、実存的な悩みというと大げさで形而上的すぎる、もっと身近で誰も解決できない迷路でしょう。

反対に「青いホタル」を男性だと読んで、再び少女と出会うような場面が訪れた、と受け止めることも可能かもしれません。

その場合「迷い込んだ」という表現が、プロモーションビデオのそこはかとないホラー感とリンクしてきそうです。

セロハン越し のぞいて見ていた
大きな空に
まだ 星は 輝いていますか

少女が少女だったころ、学校で使った「セロハン越し」に色のついた「大きな空」を「のぞいて見てい」ました。

そんな色彩豊かに見た空に「まだ 星は 輝いていますか」と問いかけています。

ここは男性が問いかけているイメージだとみるのがよいと思います。

大人になっていく少女を見守る男性が、少女に問うでもなく、自分に問うでもなく、ともに何かを見つめて(いる意識で)口をついて出た言葉でしょう。

セロハン越しでカラフルに見えた空は、少女にとっての未来の喩えでしょうか。

かつて少女だった女性の姿

遠くへ 飛ばそうと 紙風船
たたいたら 割れました

大空へ向けて「遠くへ 飛ばそうと 紙風船」を「たたいたら 割れ」てしまいました。

少女の手も成長し、紙風船がそのたたく力に耐えられなかったのですね。

あるいは、何らかの夢をかなえるべく努力をしてきたが、空へその夢(紙風船)が飛び立つ前に力を入れすぎて割れてしまった。

そんなかつて少女だった女性の姿は、

大人になっても 夕立ちに
ふられてばかりいます

というわけですね。

この辺りもどんどん難解になっていきます。

少女は「大人になっても」、少女だったころに外で夜まで遊んで雨に降られたときのように「夕立に ふられてばかりいます」。

どちらのとらえ方もできると思いますけれど、

少女の無垢さは今も変わらず生きていて、大人になってからはその無垢さゆえにさまざまな状況下で苦しいことや悲しいことに見舞われている。

または、かつての無垢さは消え去ってしまい、恋愛など駆け引きの行われる場面などで振り回され、涙がこぼれがちである。

個人的には両者の中間くらいな感じがします。

少女のまぼろし

あはれ 恋も知らないで
まつげ ぬらした 少女は
悲しき 夕焼けの まぼろしか

よって、昔の少女の無垢を知っている男性からすれば、現在の少女のあり方は「あはれ」をそそります。

複雑さや淀みをもたらしかねない「恋」など「知らないで」いながらにして、ものごとに熱く心を動かして「まつげ ぬらした 少女」なんて存在したのだろうか。

この世のものとは思えないほど美しいあの「夕焼けの」菜の花畑にだけ現れた「悲しき」「まぼろし」ではなかったのか……

男性はもう一度記憶をたどります。

ふり向いて右手を振り
うれしそうに 微笑んだ
いつか見た 僕だけの 少女よ

本楽曲は、村下さんが得意としていた【イメージは完全に伝わるけれども中身が掴めない】作品の筆頭だと思います。

あるとき出会った少女という個人を題材としながら、人間のあり方やその変化していく道のり、それを見つめる目線など、人間存在そのものを扱っている大変味わい深い一曲です。

こうした作品の性質が、ひとたび村下さんの魅力を知ると逃れられない一因なのでしょう。

なお、本楽曲は村下さんより先に亡くなった年上の従妹がモデルだというお話も聞かれます。
今回の解題は、純粋に歌詞から感じ取ることのできるイメージを中心に試みてみました。

聴きどころ

歌詞の理解はすごく難しいですけど、村下さんの歌唱によってそういう世界観なのだと妙にうなずけてしまうところでしょうか(笑)

サビへ向けての盛り上がりも秀逸なので、ぜひ一緒に口ずさんでみてほしいです。

ちょうど男性の気持ちになって感興が増してきてしまいますよ。

少女の無垢さを表現しているであろう、随所に散りばめられた星くずのような装飾音もよく耳を澄ませてみるとよい感じです。

管理人の感想

なんといってもプロモーションビデオの不思議さに打たれました。

ファンの間では半分怖いと楽しまれていますが、やはり改めて見ても怖いですね笑

PVの少女は、おそらくこの曲で歌われているよりも年齢の高い少女ですよね。

村下さんも関わって制作されたPVでしょうし、イメージに次ぐイメージ、さらにイメージと、稀代の歌人の脳内をのぞいたような気持ちにもなりました。

おうじゃ
おうじゃ

ところで当記事の解説部分の文章も、実は歌詞の順番そのままになっていることにお気づきでしたか?(変なこだわり)

皆様もどうぞ、自分に引き直したり、かつて出会ったどなたかになぞらえつつ、村下さんの名曲「少女」を楽しんでくださいね☆

他の楽曲解説もご覧になりたい方は、歌詞全文下部↓のリンクへどうぞ。(シティポップもいくつかございます)

少女【歌詞全文】

白い壁を染めて 草笛が 響く丘
菜の花と そして夕月
切れた鼻緒 帰り道の少女が一人
灯りが 恋しくて 震えてた

かすりの着物 おさげ髪には
飾りなどありません
服をきせかえても 人形は
言葉など 知りません

ふり向いて 僕を見つけ
うれしそうに 微笑んだ
名も知らぬ あどけない 少女よ


青いホタル 今も 甘い水を 探して
見つけられず 迷い込んだ
セロハン越し のぞいて見ていた
大きな空に
まだ 星は 輝いていますか

遠くへ 飛ばそうと 紙風船
たたいたら 割れました
大人になっても 夕立ちに
ふられてばかりいます

あはれ 恋も知らないで
まつげ ぬらした 少女は
悲しき 夕焼けの まぼろしか


ふり向いて右手を振り
うれしそうに 微笑んだ
いつか見た 僕だけの 少女よ

(作詞・作曲:村下孝蔵ー1984年4月1日)

この歌詞全文の引用は「少女」の魅力を解説するため、および閲覧者の方々の便宜のための必要によってなされたものです。

関連記事ーその他楽曲解説

最後に改めて、当サイトでこれまで村下孝蔵さんの楽曲を解説した記事を掲げておきます。

随時解説・解題をおこなう曲目を増やしてまいりますので、ご興味のある方はどうぞご覧くださいませ☆

村下孝蔵さん楽曲解説記事

付記

ご利用中の方も多いと思いますけれど、村下孝蔵さんの楽曲がどのくらい含まれているのか、大手サブスク音楽配信サービスを比較検討しました。

便利な世の中になったものです……カラオケが充実しているサービスもあって、村下ワールドにどっぷりと浸かるにはもってこいです。

ぜひチェックしてみてくださいね☆

⇒詳細へ(村下孝蔵さんサブスク音楽配信比較まとめ)

全曲配信中!
村下孝蔵さんの「初恋」など全曲を聴けるサブスク音楽配信サービスまとめ
村下孝蔵さんの「初恋」など全曲を聴けるサブスク音楽配信サービスまとめ
Advertisement

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA



The reCAPTCHA verification period has expired. Please reload the page.

ABOUT ME
おうじゃ
おうじゃ
生来詩人
生まれたときから詩的な人生を送っています。村下孝蔵さんに出逢ってから、その楽曲を肌身離さず心に持ち歩いては味わってきました。

姉妹サイトではシティポップの楽曲解説や、自身の生活の中で頂いたお米の銘柄の特徴をレビューしつつ、【福話術】と題したあらゆる人の心に寄り添う記事を執筆、分野を開拓しています。
記事URLをコピーしました