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村下孝蔵さんの【夢の跡】が伝える失われた恋の行方。歌詞の意味を読み解き解説

村下孝蔵 夢の跡 アイキャッチ
おうじゃ(管理人)
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村下孝蔵さんを昔からご存知の方も、新たに出会った方も、ようこそいらっしゃいました!

当記事では「哀愁物語~哀愁にさようなら~」、「16才」に引き続いて、人気曲「夢の跡」を解説・鑑賞してまいります。

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参考:村下孝蔵さん楽曲解説特集🎸

当サイトは非公式のファンサイトであり、ファンの皆様がご自身なりに楽しめる場を提供することを目的としています。同時に、村下孝蔵さんの全楽曲、とりわけその歌詞の意味や世界観を解説することを主たる目標に掲げています。

⇒村下孝蔵さん楽曲解説・歌詞解題についての詳しい「考え方」はこちら

ご興味のある方は、以下の記事もお楽しみいただけるはずと自負しておりますので、お時間のあるときにどうぞ遊びにいらしてくださいませ。

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村下孝蔵さんの【夢の跡】が伝える失われた恋の行方。歌詞の意味を読み解き解説
村下孝蔵さんの【夢の跡】が伝える失われた恋の行方。歌詞の意味を読み解き解説

(解説楽曲例:ロマンスカー、だめですか、いいなずけ、北斗七星、夢からさめたらなど)

⇒「踊り子」など代表曲はこちら

もちろん個人的な解釈であり、味わい方ですので、皆様が村下さんの楽曲を鑑賞する際のひとつの参考となれたならば幸いです。

おうじゃ
おうじゃ

それがさらに皆様の普段の生活を彩るものとなれば、この上なくありがたいです☆

早速「夢の跡」の解説に入っていきましょう!

下部に歌詞全文を用意しましたので、適宜ご利用くださいね。

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🎵 当記事の著者について

当サイト管理人

新おうじゃ

名前 / Name  
おうじゃ 

職業 / Occupation
生来詩人、お米賞味マイスター、歌詞解説・鑑賞家、福話術者(家庭教師も兼業)

実績 / Achievements
生まれたときから詩的な人生を送っています。村下孝蔵さんに出逢ってから、その楽曲を肌身離さず心に持ち歩いては味わってきました。
姉妹サイトではシティポップの楽曲解説や、自身の生活の中で頂いたお米の銘柄の特徴をレビューしつつ【福話術】と題したあらゆる人の心に寄り添う記事を執筆、分野を開拓しています。

(姉妹サイト「おうじゃの福眼」プロフィールページへ遷移します)

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『夢の跡』所収

“夢の跡”

階段を登れば 街並が見える丘
霞立つ夕暮れの 古い都町

解題

演歌やいわゆる歌謡曲ど真ん中と思えるイントロで本楽曲は始まります。

どこか切ないきらびやかさのようなものを含んだメロディですね。

基本的な場面設定としては、男性がかつてお付き合いしていた女性のことを想って、自分の振る舞いや気持ちを振り返りつつ語り掛けるというものでしょう。

本楽曲は風景が明確に描かれているところも味わいどころですね。きっとモチーフになった場所があるのだと思います(松山城でしょうか)。
松山行フェリー」と似た情景を描いているとみることもできるでしょう。

恋に破れ打ちひしがれた男性が、しばし街を離れて風に当たろうと郊外の土地の「階段を登れば」、そこはお相手の女性と年月を過ごした「街並みが見える丘」でした。

季節の割に暑くじめじめした一日でしたが、だんだんと気温が下がっていく「霞立つ夕暮れの」静かで美しい「古い都町」には点々と灯りがともり始め、男性の心情とは全く離れてそこで生活している人々の息吹を感じさせます。

風の歌が遠くで 泣いてるように響く
港からは 最後のフェリーが離れてゆく

そんな男性には丘を吹き抜けた「風の音が 遠くで」答えてくれるばかりで、まるで一緒に「泣いてるように」切なく「響く」のが聞こえています。

泣いているような風の音に混ざって「港からは」汽笛を尾のように引いて「最後のフェリーが」男性をこの地に置き去りにして「離れてゆく」のです。

一年振り訪ねたアパートの扉には
僕の知らない人の名前がかかっていた
何時までも 僕のこと忘れはしないからと
届いた手紙の訳に 今頃気づくなんて

男性はほんの先日のことを思い返します。

女性とお別れしてから「一年振り訪ねた」かつて二人で過ごした「アパートの扉には」、男性が認知できるはずもない「知らない人の名前」のプレート「がかかっていた」のです。

もはや女性がどのように暮らしているかなど触れる可能性もないことを思い知らされた男性は、お別れしたのがたった一年前であるような、早くも一年が経ってしまったような複雑な気持ちを抱えています。

そもそも男性が女性のアパートを訪れたのは、「何時までも」男性のことを「忘れはしないからと」記されてある日「届いた手紙」がきっかけでした。

「レンガ通り」(『汽笛がきこえる街』所収)など村下さんの楽曲では時折みられますが、現代では場合によってはストーカー扱いされてしまいかねない行動ですね(笑)

もしかしたら、女性も自分と別れたことを悔やんでいるのかもしれない。一人でどこか別の土地へ向かうのかもしれない。

それならばもう一度……と淡く期待をしていた男性は、アパートを訪れたこのとき、女性から届いた手紙の「訳に 今頃」になって「気づくなんて」……と打ちひしがれて膝を折ったのでした。

悪いのはこの僕と 風は頬を叩いて
いつも二人歩いた城跡に一人

夕暮れに沈む丘でその日最後のフェリーを見送った後、男性の脚は自然とかつて女性と歩いた道のりを辿っていました。

その途中にも「悪いのはこの僕と」男性の心を映して泣いている「風は頬を叩いて」、草や木がまばらに生えて苔むした「城跡に一人」佇めばいよいよ女性との関係はもう戻らないことを知らされます。

おそらく、男性は自分の目指す夢をかなえようと努力し、あるいは他の土地で名を上げ身を立てることを求めて頑張っていたのでしょう。そうして一人前の男になって、女性を迎えに行くという話をしていたに違いありません。

破るために約束かわした訳じゃないと
待ち続けてそのまま 枯れた忘れな草よ

けれど思うように事は運ばず、時間が流れていきました。

もちろん男性は「破るために」いつかは二人で暮らそうという「約束かわした訳じゃないと」自分で信じていましたし、女性も男性を想って「待ち続けて」いたのですが、どうしても移りゆく時には勝てず「そのまま」お互いの想いは乾き果てて「枯れた忘れな草」のようでした。

女性もいかんともしがたい気持ちのうちに、他のお相手との関係を始めるしかなかったのですね。

忘れな草(学名: Myosotis)

ユキノシタ科に属する一年草または多年草。小さな青い花が特徴で、花言葉には「真実の愛」「忘れられない思い出」といった意味があります。忘れな草という名前は、誰かを忘れないようにとの願いを込めたものとも言われています。

涙が虹のように月の光の中で
輝いて落ちていった あの日の君はどこに
失う愛の重さ 気付くまでの時間に
すれ違った 心ふたつ 叶わぬ夢の跡に

そのまま歩き続ける男性の頬には「涙が」風を浴びて震え「虹のように」、暈のかかった「月の光の中で」一粒だけ「輝いて落ちていった」のでした。

同じような月光の下でともに歩いた「あの日の」女性は「どこに」行ってしまったのか。男性は唇を噛みしめます。

あるいは、ここで涙を流したのはかつての女性の姿かもしれません。

男性との将来を誓って喜びに涙したあの夜か、もう男性との関係を継続することができないという話をするため最後に二人で会ったあの夜のことなのでしょうか。

離れ離れでもお互いを想い合い、過去も未来も超えて結ばれようと約束した二人が少しずつ「失う愛の」取り戻せない「重さ」に「気付くまでの時間に」、どちらも望まないまま「すれ違った」孤独な「心ふたつ」は、願いの「叶わぬ夢の跡に」浮かんで流れていきました。

すなわち、男性にしてみれば女性はきっと待っていてくれると思ったままに、その手から失うことになった愛。女性の側からは、必ず来てくれると男性のことを信じる自分の想いが薄らいでいく中で失った愛。

この両者は、その失われていく時間とともに重さを増して、よりお互いの切なさを引き立てたのでしょう。

そんな二人の様子は、かの松尾芭蕉が

ダルマ師匠(友情出演)
ダルマ師匠(友情出演)

夏草や 兵どもが 夢の跡

と詠んだ風情と通ずるものがあるということなのでしょう。

男性と女性がともに素晴らしい時間を過ごした光景はもはや失われ、二人が歩いた城跡では無数の人々があまたの想いを抱えて関係を結んだり、それが分かたれたりしてきたはずです。

さらに大きくとらえれば、いずれはこの世を去るという人間が並んでいる宿命の列に、男性も女性も織り込まれていることを強く実感したのかもしれませんね。

音もなく流れてく 悲しい星のように
すれ違った 心ふたつ 叶わぬ夢の跡に

男性と女性の心はこれ以上出会うことがありません。

この世界や人間たちにとって、見えるけれども触れられず「音もなく流れてく」定めを背負った「悲しい星のように」、男性と女性はこの世でたまたま「すれ違った」だけの「心ふたつ」なのかもしれません。

関係の最中はこの上なく確かなものに思わせるそんな悲しい心が懸命にすれ違った証は、願いの「叶わぬ夢の跡」に転がる小石や草、落ちる月影に感じることができるのみなのでした。

男性と女性という二人の人間の心情から、最後は私たち人間のあり方まで思い至らせてくれるような壮大な名曲です。

タイトル「夢の跡」について

本文中でも触れましたが、本楽曲タイトルの「夢の跡」は、松尾芭蕉の俳句をモチーフとしていると思います。

「夏草や兵どもが夢の跡」という句は、芭蕉が訪れた古戦場跡を見て感じたことを表現したものだといわれています。

この句は、かつて戦いで熾烈だった場所が、今は静かに夏草が生い茂る風景に変わっていることを描いており、「兵どもが夢の跡」は、兵士たちの栄華や激しい戦いが過ぎ去り、今はただの夢のように消えたことを意味しています。

時の経過や人生のはかなさ、そして戦争の無常さについての深い哲学的な洞察を表現しているとされています。

聴きどころ

全編にわたって統一されたリズム感といいますか、パーカッションの同じような調子が続くのですが、村下さんの歌唱によって非常に雅な世界観が表現されていると思います。

AメロとBメロともに、だんだんと盛り上がる運びが見事で、村下さんの楽曲の中ではコード進行などが分かりやすいものなのではないでしょうか。

サビの部分でのファルセットも、この時期の村下さん特有の勢いあるふっくらした仕上がりです。

管理人の感想(あとがき)

全曲集『哀愁浪漫』では、本楽曲は一番最後に収録されています。

う~ん、それは妙に哀しすぎませんか?(笑)

村下さんご自身はそこまで哀しい感じの方ではないと思うのですが、やはりすでに亡くなっていることを考え合わせると、ご自分で「夢の跡」を実演なさっているようにも感じられてなりません……。

それでは、皆様もご自身なりの解釈で「夢の跡」を味わってみてくださいね☆

夢の跡【歌詞全文】

階段を登れば 街並が見える丘
霞立つ夕暮れの 古い都町
風の歌が遠くで 泣いてるように響く
港からは 最後のフェリーが離れてゆく

一年振り訪ねたアパートの扉には
僕の知らない人の名前がかかっていた
何時までも 僕のこと忘れはしないからと
届いた手紙の訳に 今頃気づくなんて


悪いのはこの僕と 風は頬を叩いて
いつも二人歩いた城跡に一人
破るために約束かわした訳じゃないと
待ち続けてそのまま 枯れた忘れな草よ

涙が虹のように月の光の中で
輝いて落ちていった あの日の君はどこに
失う愛の重さ 気付くまでの時間に
すれ違った 心ふたつ 叶わぬ夢の跡に

音もなく流れてく 悲しい星のように
すれ違った 心ふたつ 叶わぬ夢の跡に

(作詞・作曲:村下孝蔵 編曲:水谷公生ー1982年4月21日)

この歌詞全文の引用は「夢の跡」の魅力を解説するため、および閲覧者の方々の便宜のための必要によってなされたものです。

関連記事ーその他楽曲解説など

ここまでお読みくださってありがとうございました!

村下孝蔵さんには他にも素敵な楽曲がたくさんあります。

当サイトでこれまで取り上げた楽曲を改めて掲げておきますので、お時間のあるときにぜひ遊びにいらしてくださいね

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