【人気・年収・選び方】で迷ったら職業には「優劣がない」ことを理解しよう
このカテゴリーでは、東京大学卒業、司法試験合格、そして子どもたちと一緒に学ぶ「現役」家庭教師である管理人が、教育について大切と考える内容を記述しています。
私たちは幼いうちからテレビやインターネット、SNSなどを通じて「カッコいい」仕事、「価値のある」活動などの情報に触れますね。
自然な憧れを持ったり、自分はあんな偉い人になれないと感じたり、誰もがいろいろな反応を示しながら成長していきます。
しかし、その反応の背景に優劣という尺度が潜んでいる場合が多いのです。
生活の中で刷り込まれる「優劣」の感覚
しばらく前からよく耳にするようになった言葉に「みんなを感動させたい、喜ばせたい」というものがあります。
一番この言葉に触れる機会が多いのは、スポーツ選手へのインタビューでしょうか。
選手の皆さんは日々練習や鍛錬に励んで、一つ一つの試合や大会に臨んでいます。その晴れ舞台で私たちの心を動かしたいと思うのも当然かもしれませんね。
わしはすでに80年間も坐禅を続けているんじゃ。どうだ、感動したか??
実際に自分の応援している選手が大活躍をする姿を見れば、私たちは心から感動したり、癒されたり活力を受け取ったりします。
ごみ収集は「劣った」仕事?
「優れた」選手たちの活躍を目にすることよって、子どもたちは「自分もあんな風になりたい」と考えたり、大人たちは「子どもにもあんな立派な人物になってほしい、ああいう職業について活躍してほしい」と思ったりします。
このこと自体は自然の反応で、素敵なものに触れれば自分もその一員になってみたく思うものでしょう。
しかし、ここでポイントなのは、ほとんどの人は「ごみ収集車のドライバーになりたい!」と瞳を輝かせることがないという点です。
「大谷選手みたいになりたい!」と日夜野球に励む子どもたちは数多くとも、「あの運転手さんみたいに適切な位置にごみ収集車を停車して、効率的に収集作業をおこないたい!」というお子さんは皆無ではないでしょうか。
ここでは人生の早い段階から職業に「優劣」という基準を与えてとらえていることがうかがえます。
一部ばかり取り上げる見方・見せ方の問題
世の中に存在する職業や活動に優劣をつけるという状況が発生するひとつの要因は、冒頭で述べたように、私たちが物事に触れるその触れ方にあります。
- ちょっとやんちゃな警察官が活躍するドラマや、ドクターが困難に立ち向かう映画。
- ドジっ子のカフェ店員が恋に落ち、恋人とともに思いもよらない陰謀に巻き込まれ正義をなす作品。
- 実在の人物に密着し、その方が数々の問題を乗り越えていくドキュメンタリー。
このように私たちは物事(職業)がストーリーの中に練りこまれ、練り上げられた形でばかり触れることに慣れてしまいました。
現実にはどんな職業や活動にもそれと関係のない時間や、同僚とのやり取り、気の抜けるタイミングなどがあるにも関わらず、すべてが魅力的な(あるいは悲惨な)ストーリーを持つものであるかのように受け取ってしまうのですね。
スーパースターだって一日に何度もトイレに行くし、それは仕事中だったりそうでなかったりします。
トイレで仕事のことを考えていることもあるだろうし、昨日の夕食のことを考えていることもあるでしょう。
テレビという媒体の性質からして当たり前ですが、その様子が描かれることはありません。
自分の毎日の生活を振り返ってみれば、むしろストーリー仕立ての部分の方が少ないことは誰しも感じているはずです。
すべての職業に等しい価値があることを知る
仮に私たちがそれぞれのびのびとこの世の中で暮らしていこうと考えるならば、どんな仕事にも職業にも優劣はないということを理解する必要があります。
なぜなら、ある職業に対して否定的な見方を持っていれば、その職業に就いている人に対しても否定的な印象を持ちやすいし、自分の適性や興味もその先入観によってゆがめられる可能性があるからです。
親という立場で子どもに話をする場合も、特定の職業や業種に対して優劣の感覚を持たずにいることが大切です。
○○くんのおじいちゃんは弁護士さんで、しかもパイロットなんだって!
それに引き換えうちのおじいちゃんは……80年間座りっぱなしなんて……。
どんな職業や活動でもそれに熱心に取り組む人がいます。
そこに外側からくっつけられた評価やイメージに関係なく、誰もが自分の生き方(仕事や生活)を選んでよいのだということを伝えるのは、少なくとも「教育」の重要な役割です。