おうじゃの新春初笑いコント【犬も歩けば餅に当たる】
【おうじゃの福眼】へようこそいらっしゃいました~~~~!
(今年から開始される)毎年恒例の初笑いショート(半分コント)のお時間がやってきましたね😊
動画にするどうかは未定なのですが、せっかくですので、ここで記事として公開しておこうと思います。
早速ご覧になりたい方もいらっしゃいますか??
はい、そう言っていただけるとおうじゃも大変うれしいです!張り切ってご披露しようと思います~~~~。
寄席で上演されるものなどとは比べ物になりませんが、
初笑いとはこういうものだ!
こういうものがあってもよいはずだ!
という意気込みで作成しております。どうぞよろしくお願いいたします~~~~!
犬も歩けば餅に当たる
これはちょっとしたお話なのですけど、皆さんも聞いたことありませんか?
お正月時期に犬と散歩すると、犬が餅にぶつかってしまうそうなんですよ。鏡餅もあれば、サトウの切り餅もあるとかで、その筋では話題なんです。あまりご存じない?
ヌイという犬がいるんです。
その犬が、飼い主さんといつものコースを散歩していたんですが、折悪しく雪が降ったものですから、愛しのララちゃんのにおいが薄くなってしまったんですね。電柱の根元をくんくんしても、忘年会とか新年会の名残のにおいしかしなくって……。
それ系のにおいは強いからね~~。うっぷ……。
ヌイも吐きそうになっちゃって、くしゃみを連発していたんです。
飼い主さんは普段以上にくしゃみをするヌイのことが心配で、動物病院へ連れて行こうとした。けれど、三が日の期間だったので、救急として開いている病院は遠くて連れていけません。
しばらく散歩をやめて、公園のベンチの横で休んでいると(座るとお尻が冷たいので。でも、ヌイは地べたに直座りでした)、営業していないと思っていたスーパーがやっていることに気付きました。
スーパーなら暖かいだろうし、ヌイも気分がよくなるんじゃないか、と考えて、飼い主さんとヌイはそのスーパーに入っていきました。
お正月なのにというか、お正月だからというか、お客さんはほとんどいなくて、ヌイたちの貸し切り状態。暇をしていたお店の人もヌイが可愛いので食べものをくれようとしたり、お水をくれようとしたりするのですけど、飼い主さんはヌイの体調を説明して遠慮します。
「いや、そういうときは食べた方がいいんだ。食べることで、お腹も動いて元気になる。わしも年末年始は食っちゃ寝る食っちゃ寝るの生活で、今じゃこんなに元気なんだよ」
店員さんはぽっこりと膨らんだお腹と、昼間なのに赤い顔で言いました。当然、ヌイはくしゃみをします。
「けっこうです、お気持ちだけいただいておきます」
「気持ちだけっていえば、アンタん家は『鏡餅』飾ったのかい? この店は去年から飾るのやめたんだよね。のどに詰まりそうだから」
お店の人は鏡餅があったであろう台座を指さしました。お店の陳列棚の奥に、小さな畳の敷物と木製の台があります。去年まではここに鏡餅が飾ってあったのですね。それはそれは美しかったことでしょう。そして、お店の人が元気でこうしているということは、誰ののどにも詰まらなかったということです。
雪の降る外よりは暖かい床にお腹を付けて休んでいたヌイは、何かを感じて立ち上がると、元鏡餅の台座の方へ向かって歩き始めました。飼い主さんとお店の人も一緒についていきます。
「何もねえぞ。うちは鏡餅置かないことにしたんだから」
「我が家はお供えしてますよ。一年に一回のことですし」
「一年中置いておいちまうから、今年はやめたんだよ。大掃除のときに去年の鏡餅処分したんだから」
罰当たりめが!
ヌイは身体が温まってきたのか、しっぽの先をひゅんひゅんと振って、元鏡餅の台座を見上げます。「あれが気になるの? どれ」飼い主さんがわきの下に手を入れて持ち上げてあげると、ヌイは台座の方へ首を精いっぱい伸ばします。
「きれいに掃除したんだがな。餅もカビてなかったし」
「――どうしたね、そこ乗りたいのかね?」
飼い主さんが言うと、お店の人も赤い顔でうなずきました。飼い主さんはヌイのお尻から順番に台座に乗るように下ろしてあげて、慎重に手を放しました。元大きな鏡餅用の台だったとはいえ、ヌイが乗るには狭いです。
ヌイは腰を上手に曲げながら、バランスを取って、飼い主さんやお店の人を見つめました。
「かーわいいね~。鏡餅みたいだよ」
「戌年だったら絵になりましたかね。ヌイ、危ないから降りるよ、ほら」
飼い主さんが手を伸ばしても、ヌイは動こうとしません。台座にあぐらをかくようにどっかりと座り、舌を長く出してうれしそうな目をしています。
「やっぱお腹空いてんだよ、……戌年のときにドッグフード買っといたんだが」
「そんな古いの要りませんよ! ヌイは美食家ですし、人からもらったものは食べないんです」
肩に提げていたバッグから、飼い主さんはジッパー付きのポリ袋を取り出しました。年末のうちから腕によりをかけて作っておいたヌイのためのおせち料理です。たくさんの量でなくてよいので、作るのはそれほど手間でもありませんでした。
ヌイは目を輝かせると、飼い主さんがつまみ上げた数の子を見つめました。ヌイはその指にむしゃぶりついて、口をなめまわしました。
「今のなんだ? なんで指舐めた?」
「人間と身体の大きさが違うんだから、丸ごとはやれないので、一粒です。ヌイには十分ですよ」
「そりゃ……すごい手間だな」
「ヌイのためですから。うちの守り神です、戌年のときに家族になったんですからね」
あれ……ことし何年??
お店の人は手を打ちました。
「なるほどな! だからそこに乗っかりたがってるんだ。狛犬だ、狛犬」
「ヌイです、それを言うならヌイマコ」
「その名前の付け方!」
赤い顔で笑って、お店の人はレジのカウンターに戻っていきました。「好きにしてていいぞ、どうせ客来ないだろうし」
しばらく休んでいても、他のお客さんは誰も来ませんでした。飼い主さんとヌイは暖かくなって眠くなってきて、台座の横に椅子を借りてひと眠りすることにしました。
と、うとうとしかけたとき、ヌイが激しく吠えたてました。外でカツン、カツンと拍子木のような音がします。
「どうしたの、ヌイちゃん」
「あれは――神社の人だな。初詣する人が減ったもんだから、出張してくるんだと。おととしくらいからやり始めたんじゃないか。……そうだ、おみくじも持ってきてくれてるから、引いてみたらどうだい? 今年の運勢を占えば」
飼い主さんが返事をするまでもなく、ヌイがたっぷりと吠えて答えました。飼い主さんはお店の人にヌイを見ていてくれるよう頼んで、店の前を通りすぎていった神社の人を追いかけました。
神社の人はシャカシャカと筒を振って、棒の先に出た「4111」という番号をお店の人に伝えるよう飼い主さんに言いました。
「あの……4111っていう番号を言えって言われたんですけど」
お店に戻って飼い主さんが不思議そうに番号を伝えると、お店の人はにっこりと笑いました。
「いやーさすがだな、ヨイワンワンか。アンタがヌイちゃんのこと、大事にしてるのが分かるよ。――そんで、4111ね、4111……ほら、これが景品」
「これって……」
ヌイがうれしそうにしっぽを振って、今にも台座を飛び降りそうです。飼い主さんはあわててヌイを降ろしてあげて、一緒に目の間に置かれたものを見ました。
『新春 戌年』と書かれた鏡餅が、少しホコリをかぶっています。
いつの景品なんだ?!
また次のとき使えるから……?
罰当たりめが!!
終幕
というわけで、新春初笑いおうじゃのショート(半分コント)をお送りいたしました。
とても特殊な笑いのツボを押さえる作品となっておりますので、楽しめた方もそうでなかった方もいらっしゃることと思います。
(読んでくださって、本当にありがとうございます!)
何度か味わううちに、笑いどころが見えてくるようになりますから、ぜひ、どうしても暇すぎるときなどにまたお楽しみくださいませ☆
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